バックアップ形式「バージョン12」(アーカイブ3)は、Acronis Cyber Protect Cloud および Acronis Backup 12.5 の主要なアーカイブ タイプです。各種のデータ(モバイル、アプリケーション、アプリケーション認識型、Mac OS、Oracle DB、Microsoft 365 メールボックスなども含む)をバックアップするために使われます。
バックアップ形式「バージョン12」の設計
「バージョン12」という形式のアーカイブには、以下のスキームのいずれかを適用できます:
- 常に増分
(保護対象である各種のデータをバックアップする場合)クラウドおよび(コンピュータ全体またはディスクレベルのバックアップの場合)ローカルのバックアップ先の両方に適用可です。
初期の完全バックアップおよびその後の増分バックアップは、ファイルのチェーンではなく、1つの .tibx ファイルに保存されます。 - マルチフル
保護対象である各種のデータをバックアップする際、クラウドおよびローカルのバックアップ先の両方に適用可能です。
完全バックアップおよびその後の差分・増分バックアップのチェーンは、ローカルバックアップの場合はチェーンごとに1つの .tibx ファイルに保存され(詳しくは Archive structure of multi-full backup をご参照ください)、クラウドバックアップの場合はすべて1つの .tibx ファイルに保存されます。
「バージョン12」という形式のアーカイブには、「追加専用モード」と「再書き込みモード」という2つのモードがあります:
- 追加専用モードでは、新しいデータはいつもファイルの終わりに追加されます。従って、ファイルの論理サイズは大きくなる一方です。追加専用モードは、クラウドまたはテープにバックアップするときに使われます。
- 再書き込みモードは、上記以外のすべての場合に使われます。再書き込みモードでは、アーカイブ3は自動的に未使用のブロックにデータを書き込みます。
バックアップ形式「バージョン12」における制限
一般:
- レガシーのアーカイブ形式から新しいアーカイブ形式への変換はできません。
- 古いアーカイブ形式のバックアップをアーカイブ3にエクスポートすること(あるいは、その逆)はできません。
- 「マウントポイントのターゲットの復元」という復元のオプションはサポートされません。
- 「バックアップの分割」というバックアップ オプションは、ASN およびクラウドというバックアップ先の場合にサポートされません:
- バックアップ先が FAT32 または Acronis セキュアゾーンの場合、バックアップは自動的に4GBごとに分割されます。
- 完全と差分のチェーンは、自動的にそれぞれ個別のファイルに置かれます。
- アーカイブの圧縮はサポートされません。すなわち、バックアップをエクスポートしない限り、アーカイブの論理サイズは変えられません。
- 削除対象としてマークされたブロックは再利用されます。
- 削除済みとしてマークされたブロックは、ファイルシステムがスパースをサポートしている場合、スパース化されます。
- テープ以外のロケーションでは、ユーザーとの対話はありません(例えば、「ディスクに空き領域がありません」など)。
- ファイルの復元の際、復元先ではユーザーとの対話はありません(たとえば、「復元先のファイルがロックされています」、「復元先に空き領域がありません」など)
Acronis ブータブルメディア:
- ファイルのバックアップは、アーカイブ3ではない古い形式のままとなります。
- Linux メディアでは、ファイルのバックアップから NTFS ボリュームに復元を行うことはできません。
ASN
- アーカイブ3は重複除外格納域にバックアップできません。また、重複除外格納域へのレプリケーションもできません。
バックアップ形式「バージョン12」のアーカイブ サイズ
アーカイブのサイズは、データの種類およびバックアップされるユニークなデータの量によって大きく異なります。重複するデータが多ければ多いほど、圧縮率が高くなります(アーカイブ3の重複除外機能による圧縮です)。また、圧縮率はデータの種類にも強く依存します。従って、バックアップする前は、アーカイブ サイズの大まかな推定でも不可能です。
「バージョン12」という形式のアーカイブは、以下の要素から構成されています:
- 保護されているデータ:
- データ(特定の時点における保護対象のデータの実物)
- 未使用領域(「空き領域」ではありますが、まだスパース化されていません;現在は保護されているデータが占める領域に含まれていますが、今後のバックアップのために再利用されます)
- 割り当て解除されたデータ(スパース化済みのデータ)
- メタデータ(アーカイブの構成に関するサービス情報)
「常に増分」のアーカイブの場合
バックアップ(別称: 復元ポイントまたはスライス)が削除されると、その復元ポイントでのみアクセス可能だったすべてのデータは「未使用」としてマークされます。チェック時に対象のアーカイブは別の Cyber Protection エージェントで読み込み・参照のために開かれておらず、そして同時に以下のいずれかの条件を満たす場合、スパース化が開始されます:
- 「未使用」のサイズは1GBより大きいです
- 「未使用」のサイズがアーカイブの物理サイズ(ディスク上のサイズ)の 5% より大きいです
スパース化の後で、「未使用」の領域はすべて「パンチ」されます(つまり、スパース化されます)。従って、空のブロックの断片が作成されます。その結果、対象のアーカイブ ファイルの物理サイズが小さくなり、ストレージの空き領域が増えます。
「マルチフル」のアーカイブの場合
ターゲット ロケーションの空き領域を増やす方法:
- スパース化を使用すること
- マルチフル モードで書き込み中に、古いチェーンを削除すること
新しいバックアップ チェーンが開始されたとき、前のチェーンは不変になります。すなわち、前のチェーンからデータを読み込むことはできますが、編集(スパース化やデータの再書き込みなど)を行うことはできません。従って、古いチェーンから個別のバックアップ スライスを削除しても、空き領域は増えません。
また、完全バックアップを含めてバックアップ チェーン全体を削除したとしても、完全バックアップには依存項目があるため、空き領域の量は変わりません。たとえば、チェーン2(Chain 2)およびチェーン3(Chain 3)はチェーン1(Chain 1)の完全バックアップに依存します。それで、チェーン1を削除しても、チェーン2とチェーン3も併せて削除しないと、その領域は空きません。
「バージョン12」という形式のアーカイブのサイズを小さくする方法
クラウド上のアーカイブのサイズを小さくする方法
- ユニークなデータ(他の復元ポイントには存在しないファイルやフォルダ)を含む復元ポイント(1つまたは複数)を削除します。
- バックアップ計画の「バックアップする項目」セクションから一部のバックアップ ソースを削除します:
- ディスク バックアップの場合、ディスクの1つのチェックボックスをオフにします。
- ファイル バックアップの場合、一部のファイルまたはフォルダのチェックボックスをオフにします。
それから、最長の保持期間が満了するまで待ちます。
ローカルのアーカイブのサイズを小さくする方法
方法 1
(対象のアーカイブにある最後のチェーンの場合のみ)スライス D7、I8 または I9 には何らかユニークなデータ(他のスライスには含まれていないデータ)がある場合は、D7、I8 または I9 を削除すると空き領域は多少増えます。
方法 2
特定の完全バックアップから始まっており、その後の差分バックアップをすべて含まれている各チェーンを削除しますが、その次の完全バックアップを残します。F1-I9 のすべてのスライスが削除されると、それらが占めていたすべての領域は解放されます。
注意事項: F1-I3 のスライスのみ削除すると、領域は解放されません。D4-I9 も併せて削除する必要があります。
方法 3
依存項目のないチェーン(最新のもの、あるいは差分バックアップから始まっているもの)を丸ごと削除します。
例1: スライス D4-I6 または D7-I9 という3つの具体的なスライスを削除すると、それらが占めていたすべてのディスク領域は解放されます。
方法 4
依存項目のないチェーン(最新のもの、あるいは差分バックアップから始まっているもの)を丸ごと削除します。
例2: スライス F7-I9 または F10-I12 という3つの具体的なスライスを削除すると、それらが占めていたすべてのディスク領域は解放されます(それらのスライスに依存する差分のチェーンがないからです)。